2012年5月4日金曜日

県民健康管理調査についての考察

福島県民健康管理調査の第5回資料と第6回資料の甲状腺全県先行検査(現状確認のための検査)の結果を比較した。

第5回資料 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240125shiryou.pdf
第6回資料 http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240426shiryou.pdf


第5回は福島医大実施分の3765人(川俣町山木屋地区、浪江町、飯舘村)のみ記載で29.7%がA2判定(5mm以下の結節か20mm以下の嚢胞)。南相馬市と川俣町の山木屋地区以外の10677人の出張検査分の結果は含まれていない。理由は明示していない。第6回は38114人(第5回より広範囲)の35.3%が同じくA2判定だった。

第6回の結果は、第5回の結果に第5回の出張検査分と、追加実施分(伊達市、田村市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、葛尾村)を加えてある。大熊町・双葉町等さらに多くの高線量区域の子供達の検査によりA2判定が29.7%から35.3%へ増加しており、これが検査人数の増加によるのか、時間と共に異常が現れているのか不明である。

平成23年度の検査の対象者は、国が指定した警戒区域等避難区域の市町村の対象者である。対象者は、平成23年3月11日に0歳から18歳までの県外避難者を含む全県民である。具体的には平成4年4月2日から平成23年4月1日までに生まれた県内居住者(県外避難者を含む)である。対象者合計47766人のうち38114人が受診し、受診率は79.8%であった。9652人が甲状腺検査を受けていないことになる。受診した県外居住者は5183人で、県外居住者の受診率は13.6%であった。

平成24年度の検査の対象者は、3月時点での環境放射線量の高かった市町村順に行われるそうだ。検査実施市町村は、福島市、二本松市、本宮市、桑折町、天栄村、国見町、白河市、西郷村、泉崎村、郡山市と三春町であり、予定対象者数は154894人である。(県外避難者4653人を含む。)計画としては、当分の間は医科大学を中心とした検査実施体制をコアとして検査を実施しながら、県内検査拠点(県内医療機関)においても実施できる体制を整えていくらしい。また、県外避難者のために、県外検査実施機関も認定していくそうだ。

調べる人数が増えれば増えるほど、異常の発見も増える可能性はある。実は報告をきちんと読むまで検査結果が福島県全域を含んでいないのも知らなかった。

第6回ではB判定(5.1mm以上の結節や20.1mm以上嚢胞)が第5回の26人(から186人に増え、平成24年4月12日時点で14名が二次検査(詳細な甲状腺の超音波検査、血液検査、尿検査)を受けている。

北海道深川市立病院内科の松崎道幸医師によると、第6回の結節頻度の1.0%は、ベラルーシ共和国ゴメリ地域のチェルノブイリ事故後5-10年の結節検出率の1.74%に近い。これは事故後1年足らずの事である。しかし第5回では高線量区域の川俣町・浪江町・飯舘村だけで結節頻度が2.2%だったから、さらに高い。

チェルノブイリ事故に影響を受けたベラルーシ共和国で使われている、甲状腺結節に値する言葉の定義がのう胞も含むのであれば、福島県でのこれまでの結節とのう胞の検出率が36.1%と言うのは、1.74%よりもはるかに高い。

先行検査が進むにつれ、時間も経って行く。細胞分裂が活発な育ち盛りの子供達においては、時間と共に、甲状腺細胞の異常も促進するのではないだろうか。

第5回資料には甲状腺検査結果の評価について、と言うページがあるが、第6回資料にはない。

第5回資料によると、A判定は次回(平成26年度以降)の検査を勧めると書いてある。A2判定の5.0mm以下の結節や20.0mm以下ののう胞は、「通常の診断においても、次回の検査までの間に自覚症状などが出現しない限り追加検査は必要とされております。」だそうだ。「甲状腺超音波検査を実施した場合、通常でもそれなりに多く認められる良性所見とされており、こうした小結節・小のう胞は治療等の対象とならず、経過観察とされています。また、超音波検査のみの診断で十分であり、追加検査は必要ありません。」とも書いてある。

実施計画によると、「平成26年4月以降は、本格検査として20歳までは2年ごと、それ以降は5年ごとに検査を行い、生涯にわたり県民の健康を見守る予定。」だそうだ。

「現時点では、放射線の影響は考えにくく、二次検査の対象となったB判定の方の大部分は良性の結節であることが予想され、以前から存在していた可能性が高いと考えられます。」と書いてあるのを読み、疑問がわいた。私は小児科医でも甲状腺専門医でもない。実際に小児においてこのような結節やのう胞は普通なのかを知りたいと思い、数ヶ月前からコンタクトを取っている、小児科医であり、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故以来30年以上反核運動を続けて来たオーストラリアのヘレン・カルディコット医師(73歳)に尋ねてみた。
(カルディコット医師の2011年3月18日の記者会見 http://www.youtube.com/watch?v=yIZZZGCruvY

カルディコット医師の返事は次のようであった。

「この子供達は追跡調査をしてる場合じゃありません。のう胞や 結節などの全ての異常は直ちに生体組織検査をして悪性であるかを調べるべきです。 こういった甲状腺異常が一年も経たないうちに現れるというのは早過ぎます。普通は5-10年かかるものです。これは、子供達が大変高線量の被曝をしたこと を意味します。 もしも悪性なら、甲状腺の全摘出が必要です。 子供達に甲状腺結節やのう胞があるのは、まるで普通ではありません!」

また、平時における子供達の甲状腺エコー検査のデータがないと思っていたら、山下俊一が共著者である2000年の研究論文内にあった。
https://docs.google.com/file/d/0B6kP2w038jEAQklDRlpNdk5RN2s/edit

これによると、長崎の250人の7-14歳の子供達では結節は0%でのう胞は0.8%であった。

県民健康管理調査で述べられている事と食い違っており、カルディコット医師の返事と符合する。

例え甲状腺結節やのう胞が良く見られるものであり事故以前から存在していたとしても、放射能被曝の影響下においては、サイズが早く大きくなったり、悪性化の可能性とスピードが増える可能性はないのか?実際に事故前に甲状腺エコー検査を受けていた人のデータがあれば比較する事ができるかもしれないが、それでも個人差があるだろう。万が一を予測し、最悪の設定を考えて対処するのが普通ではないかと思う。「おおむね安心」などと言われて安心できる親がいるだろうか。

そして、福島県しか公的な甲状腺エコー検査をしていないようだが、関東地方だけでなく色々な場所で子供だけでなく大人の甲状腺疾患も増加しているようだ。関東から避難した子供にも甲状腺異常は見つかっている。全ての症例が明らかになったら、ものすごい数になるかもしれない。

起こり得る甲状腺疾患はガンだけではない。甲状腺エコー検査だけでなく、甲状腺の血液検査も行うべきだ。しかし何よりも大切なのは、空間線量測定だけでなく、土壌検査によって福島第一原発から放出された測定し得る全ての放射性核種の測定を行い、放射能汚染の正しい情報を人々に知らせ、汚染のひどい場所から大人も子供も避難させる事だ。



リポート:平沼百合
twitter @YuriHiranuma

1 件のコメント:

  1. リポートありがとうございます。福島県中通り在住のものです。
    私の疑問の部分でした。
    甲状腺エコーの結果が来まして、長男A2判定 長女A1判定でした。
    医大に電話して個別に問い合わせしましたところ、長男のう胞は1つ、水分の多いものです。心配はなしとのことでした。
    私のお友達も何人も電話しました。「のう胞は個性のようなものです。ホクロがあるなしと同じで、生まれつきある人もいます」と説明を受けたようです。

    一回のエコー検査で判断。血液検査もしていないことに不安に思いまして、血液検査を付け加えるべきではないかと要望を出しました。
    すると、「健康な子供にリスクのある針はさせない」といわれました。

    なんてことでしょうか!この異常事態なのに??


    文科省の健康相談にも電話しました。
    短期間に高線量の放射能被ばく考えられないので、血液検査は必要ないといわれました。
    どうすれば血液検査をしてもらえるようになるのですか?と聞きました。
    有識者からの提案があれば、考えられるということでした。

    低線量被ばくについて、なにがわかるのか?わかっているのか?と聞きたいです。

    因みに、私の子供たちは自主的にエコー検査と血液検査を受けてきました。

    のう胞に関しましては、A2判定だった息子は、医大の結果とは数が違ってました。1個が2個に。
    A1判定の娘は、ないはずだったのに2個ありました。

    2人とも血液検査は異常は見られませんでしたが、他の子供たちは、成長期ということもあるかもしれませんが、”貧血”が目立っていました。

    この数人のデータでなくもっと多くの子供たちのデータが必要です。
    もっともっと、みなさんの声が聞きたいです。

    政府やマスコミの発表ではなく、真の声が聞きたいです。

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