2013年2月7日木曜日

日本経済新聞の電子版記事 「放射線と発がん、日本が知るべき国連の結論」(1月17日付)、 著者ジェイムス・コンカへの反論

2013年1月11日に、米経済誌フォーブスは、“Like We’ve Been Saying--Radiation Is Not A Big Deal”「言い続けているように、放射能は大した問題ではない」と言うタイトルの記事を掲載した。
http://www.forbes.com/sites/jamesconca/2013/01/11/like-weve-been-saying-radiation-is-not-a-big-deal/

この記事の完全和訳は、1月17日付けの日本経済新聞の電子版に、「放射線と発がん、日本が知るべき国連の結論」と言うタイトルで掲載された。
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO50651160W3A110C1000000/

著者ジェイムズ・コンカは、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)はついにLNT(しきい値なし直線)仮説を低線量被ばくによる発がん推定に使う事はできないと認めた」と述べている。

コンカは、「UNSCEAR 2012」と呼ばれる報告書らしきものに情報源として言及している。コンカによると、「10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の 放射能は『大した事がなく』、LNT仮説は、世界中の自然放射線を含み、原子力エネルギー、医療行為および福島のような事故に影響されている、ほとんどの 地域に重要な放射能レベルの範囲である、10レム(0.1シーベルト)以下には適応しない」と言う。

コンカが実際にリンクしている「UNSCEAR 2012」は、実は、世界原子力協会のニュースサイトであるWorld Nuclear Newsの「国連が放射能に対するアドバイスを承認」と言う記事である。
http://www.world-nuclear-news.org/RS_UN_approves_radiation_advice_1012121.html

しかし、この記事は、2012年12月10日に掲載され、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)第59セッション(2012年5月 21−25日)レポートの内容に、紛らわしく誤解を招くような形で言及している。このレポートは、国連総会公式記録第67セッション補遺46号(以 下、”UN A/67/46”とする)であり、リンク先は下記である。http://www.un.org/ga/search/view_doc.asp?symbol=A/67/46 (コンカは、記事掲載から一週間以上過ぎてから、記事の第二段落の最後にこのリンクを補足した。筆者が1月17日に記事を印刷した際にはこのリンクはなかったため、国連総会議事録内で氏の情報源を探すはめになった。)

この、World Nuclear Newsの「国連が放射能に対するアドバイスを承認」と言う記事は特に、下記に抜粋された10ページ目のパラグラフ番号25(f)に言及していると思わ れ、「国連は、個人と集団における放射能の健康被害について、各国が何が言えるかと言う事について明らかにするアドバイスを採取することになる」と宣言し ている。
                                        
”(f) 一般的に、大衆における健康被害の発症増加は、典型的な世界的標準自然放射線量のレベルの放射能への慢性被ばくのせいであると確実には言えない。これは、 低線量でのリスク評価に関連する不確かさ、放射能に特定した健康被害の生物的マーカーが現在存在しないことと、疫学調査の統計学的パワーの不十分さのため である。故に、科学委員会は、大変低い線量に多くの個人数をかけることにより、自然バックグラウンド放射線レベルと同じかそれより低いレベルの増加する線 量に被ばくしている集団の中における放射能由来の健康被害を推定することは推奨しない。”

しかし、UNSCEARレポート”UN A/67/46”は、単に、「推奨しない」と述べており、それは「各国が何が言えるのか」を規制すると宣言すると言う事とは同じではない。この記事の著者 が誰かは記載されていないが、UNSCEARが、放射能の影響について誰が何を言うかをコントロールしていると推測しているようである。

コンカは、フォーブス誌の記事内で、UNSCEARの「オフィシャル」ロゴの下に次のような文章を示す事により、更に一歩踏み出している。「原子放射線の影 響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)はついに、LNT(しきい値なし直線)仮説を低線量被ばくによる発がん推定に使う事はできないと認めた。これ で日本国民は、自国の食べ物を食べ、怖がるのをやめることができる。情報ソース:国連」。コンカの意見がUNSCEARのロゴの下に位置づけられていると 言う事実は、読者にとっては、これがさもUNSCEARのオフィシャル声明であるかのように簡単に取れる。

コンカの、10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能は「大した事がなく」、「LNT仮説は、世界中の自然放射線を含む範囲で ある、10レム(0.1シーベルト)以下には適応できない」と言う主張に関しては、一体どのようにすればそのような結論に達することができるのか謎であ る。まるで何も無い所から取り出したかのようである。

まず最初に、コンカがリンク先を示している“UN A/67/46”のどこにも、10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能が「大した事がない」、もしくは「世界中の自然放射 線を含む範囲」に適応されると述べられていない。しかし、上記で抜粋したパラグラフ番号25(f)は、「典型的な世界的標準自然放射線量のレベルの放射能への慢性被ばく」に言及している。もしかしてコンカは、「世界的標準自然放射線量のレベル」を自由に解釈し、イランのラムサールやブラジルのガラパリと言うような、珍しいHBRAs(高自然放射線地域)での最も高線量な自然放射線の事を意味しているのであろうか?
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-07-03

UNSCEAR 2000 添付B「自然放射線源からの被ばく」の111ページ目のパラグラフ番号92には、「自然放射線からの世界的な年間被ばく量は、一般的に1〜10 ミリシーベルト位であるとみなされ、2.4 ミリシーベルトが現在の平均値の推定である。」と述べられている。
http://www.unscear.org/unscear/publications/2000_1.html

次に、コンカが言うように、10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能が「大した事がない」状況であるわけでは、全くない。進 化生物学者アンダース・モーラー(フランス)とティモシー・ムソー(米国)による2012年のメタ分析「自然放射線の自然変異の、人間、動物とその他の生 物への影響」によると、自然放射線の自然変異は、突然変異率、DNA損傷と修復、免疫や癌を含む病気に大きな影響を持つ事が証明された。
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-185X.2012.00249.x/full
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1469-185X.2012.00249.x/pdf

10レム(0.1シーベルト、または100ミリシーベルト)以下の放射能への被ばくの影響は、自然放射線、医療被ばく、チェルノブイリの清掃作業員における白 血病や、原子力発電所の近くでの白血病を含め、英国の放射線生物学者であるイアン・フェアーリーによって論じられている。
http://www.ianfairlie.org/news/recent-evidence-on-the-risks-of-very-low-level-radiation/
http://www.ianfairlie.org/news/a-100-ミリシーベルト-threshold-for-radiation-effects/

3番目に、LNT仮説が、10レム(0.1シーベルト)以下には適応できない、と言うのは本当ではない。フェアーリー氏は、自然放射線量ほどまでも低い線量 でも、統計学的に有意な結果を持つ非常に大きな規模の調査の数々を論じ、低線量における線量反応関係の直線形を示している。
http://www.ianfairlie.org/news/the-linear-no-threshold-theory-of-radiation-risks/

コンカは、日本政府が、放射能汚染を恐れる国民を安心させるために、世界的に認められた食品中のセシウム基準値である1,000 Bq/kg を半分にしたと主張するが、実際には、日本では、福島原発事故のずっと前から、緊急時に使用される食品中放射性物質の指標を設定していた。故に、最初に設 定された暫定基準値である500 Bq/kgのセシウムは、日本政府が国民の恐怖を「緩和」するために妥協したものではない。この基準値は、現時点では100 Bq/kgまで下げられている。米国の基準値は1,200 Bq/kgと、途方も無く高い。すなわち、事故直後に米国が行なった日本からの輸入食品の放射能検査は、測定結果がこの基準値の1,200 Bq/kg以下であったとしても、実質意味がなかったと言う事になる、とも言える。
http://www.fda.gov/newsevents/publichealthfocus/ucm247403.htm

余談だが、コンカが記事内で言及した基準値は正確さに欠けている。日本における現在の牛乳の基準値は、コンカが言うように200 Bq/kgでなく、50 Bq/kgである。

コンカの記事内の、「世界的に認められた食品中のセシウム基準値は1,000 Bq/kg(米国では1,200 Bq/kg)」と言う文章は、この数値を「認める」のが誰かと言う点では、少々誤解を招くような表現である。この高数値は、明らかに原子力の発展を保護し 推進を切望する人達によって決められ、この数値が意味する所を理解し得ない人々に、その判断を課している、。無論、人々の健康と命を守ろうとする人達の視 点は明らかに異なり、このような1,000 Bq/kgや1,200 Bq/kgという基準値の受け入れに反対している。

根本的な事実として言えるのは、この「放射能からの死亡率の計算」と言うレポートより抜粋されたように、無害であると認識される放射線量というのは存在しないのである。

「食品内で許容される放射性物質の公式な最大値は、集団を危険から守るように設定されている。しかし、放射能は化学的毒物とは違い、無害であると言うしきい値 は存在しない。故に、どんなに微量でも、放射能は、無害でも良性でも異存がないわけでもない。当局(政府または国際機関)が標準値や最大許容量を推奨また は設定するという事は、基本的には、ある一定の状態でどの位の死亡率や発病率が容認できるかと言う事を決めると言う事なのである。」
foodwatch.de/foodwatch/content/e10/e42688/e44884/e44993/CalculatedFatalitiesfromRadiation_Reportfoodwatch-IPPNW2011-09-20_ger.pdf
               
実際、欧州の消費者権利グループであるフードウォッチ(foodwatch)と核戦争防止国際医師の会(IPPNW)ドイツ支部は、放射性セシウムの許容限 度を、 乳児食で8 Bq/kgとその他の食品で16 Bq/kgに下げるように要求した。この許容限度は、最大年間実効放射線量の0.3 ミリシーベルトに基づいているが、これはドイツの放射能防護条例において設定されている、原子力発電所での平時の運転時における最大被ばく量限度である。
http://www.ippnw-europe.org/?expand=681&cHash=02aa1d26e8

コンカの記事のコメント欄を読むと、コンカは、「少量のセシウムの経口摂取」は、体内から排出されるから無害だと考えているようである。だが、本当に無害な のだろうか?放射性セシウムは、一般的に認識されているように、単に体内の中でも主に筋肉に分布され、何も害を及ぼさずに排出されるのだろうか?

現在はウクライナに亡命中の、ベラルーシの解剖病理医学者バンダジェフスキーは、放射性セシウムが、体内の骨格筋以外の様々な臓器に蓄積される事を示した。 バンダジェフスキーによると、放射性セシウムは複数の臓器システムに影響を与えるが、特に心筋細胞への影響が大きく、不整脈や突然死を引き起こす。

2013 年1月23日に公表された研究論文 “Artificial Radionuclides in Abandoned Cattle in the Evacuation Zone of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant”「福島第一原子力発電所の避難区域に置き去りにされた牛における人工放射性核種の分布」では、日本の研究者のグループが、牛の様々な臓器にど の位の放射性セシウムが蓄積されたかを示した。
http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0054312
内容の要点和訳
http://fukushimavoice.blogspot.ca/2013/02/blog-post.html

蓄積した放射性セシウムが、これらの牛において発癌に至ったかどうかは、今となっては知る術がない。と同時に、日本政府が避難区域に置き去りにされた家畜の 処分を命じたために安楽死させられたこの牛達が、何らかの疾患を発病していたかも定かでない。しかし、臓器内に蓄積された放射性セシウムから放出される放 射能が、心臓、腎臓、肝臓、肺、膀胱や甲状腺などの臓器のデリケートな細胞や組織において、全く何も害を及ぼしていなかったとは考えにくい。

コンカは、UNSCEARが福島原発事故による観察可能な健康被害を見つけなかった事を盾に、日本の人々は再び国産の食品を食べ始め、世界のほとんどの場所の自然放射線レベルと同様の、軽い放射能汚染を受けている地域に戻る事ができる、と述べている。

“UN A/67/46”の4ページ目のパラグラフ番号8によると、委員会の調査に用いられたデータの情報源は、日本政府、国際連合加盟国、そして包括的核実験禁 止条約(CTBT)機関、国連食糧農業機関(FAO)、国際原子力機関(IAEA)、世界保健機関(WHO)や世界気象機関(WMO)などの諸機関だっ た。また、ピア・レビュー科学雑誌に掲載された情報や分析、そして一般市民によってクラウドソーシング・ウェブサイトにアップロードされた測定値なども使 われた。

UNSCEAR は、低線量被ばくの放射能リスク推定を設定する際に、癌と遺伝的影響しか重要だとみなさない。故に、パラグラフ番号9(a)で「作業員や子供や、集団の他 のメンバーにおいて、放射能被ばくのせいである健康被害は見られなかった。」と述べられているのは不思議ではない。原発事故から22ヶ月後の段階では、放 射能由来の癌の発症はまだ起こっていないと思われており、日本政府も福島県も、先天性奇形のような遺伝的影響を示すような疫学調査を積極的に行なっていな いように思われる。

しかし現実には、非公式ではあるが、福島県のみならず、東京や、東京の周囲の関東地方でも、無脳症や白血病などの報告はある。また、鼻血、湿疹、疲労や、感 染症の蔓延や再発なども東京と関東地方で報告されており、地域によっては、小中学校の検診時での心電図異常が増加している。橋本病や亜急性甲状腺炎などの 甲状腺疾患の報告も頻繁になっている。東京と関東地方で、子供の白血球が低下していると言う話もある。

福島第一原発での収束作業に従事している東電と下請け企業の作業員においての健康被害はないと報告されているが、だからと言って、それを証明する調査や検査 結果が公表されているわけではない。すなわち、作業員達が何も健康被害をこうむってないと言う、客観的な証明はないのである。原発事故後、公表されている だけで少なくとも5人の作業員が亡くなっているが、東電が個人情報保護のために死因を公表しなかったケースもある。これとは別に、福島第一原発の4号機 タービン建屋で、震災後間もなく東電社員2人が死亡している。

コンカが次のような情報をどこから得たのかは不明である。「事故後のフクシマ作業員6人の偶然の死は、放射能とは全く無関係であり、彼らは瓦礫に押しつぶさ れたり、海に流されたりと言う事故のせいで亡くなった。」何の根拠も示さずに、その6人の作業員が事故で亡くなったとほのめかすのは、とんでもない事であ るように思える。これを証明するような、ビデオテープや目撃者の証言などはあるのだろうか?コンカは、地震と津波の後の日本で何が起こったのかを「本当 に」理解しているのだろうか?

最初に亡くなった作業員は、60歳の男性で、福島第一原発で働き始めた2日目に「心筋梗塞」で亡くなった。この男性は、仕事のある都度、様々な原発へ出稼ぎ に行く、多くの「季節原発労働者」の1人だった。こういう原発労働者達は、自分の累積被ばく量を把握していないかもしれない。突然の心臓死は、単に「心筋 梗塞」と呼ばれる事が多い。そのような事を考慮すると、この男性の「心筋梗塞」は、長期間に渡る放射能被ばくのせいであると言えるかもしれない。

次に、40代の作業員が、2011年8月の初めに福島第一原発で一週間仕事をした後、同年8月半ばに急性白血病で亡くなった。この作業員の被ばく量は0.5 ミリシーベルトだった。東電はこの男性の白血病と放射能との因果関係を否定した。この男性が、福島第一原発での作業の前に、何らかの職業的な放射能被ばく をしていたかどうかは不明であり、東電は調査をするつもりもなかった。

亡くなった詳細が分かっているもう1人の作業員は57歳の男性であったが、2012年8月22日に気分が良くないので休んでいた所、意識を失っているのを発 見された。病院に搬送されて死亡が確認された。福島第一原発で一年間作業をした結果の累積被ばく量は、25 ミリシーベルトだった。

パラグラフ番号9(e)では、2011年3月末に飯舘村、川俣町といわき市で1083人の子供(男子544人と女子539人)に行なわれた甲状腺被ばく調査 の結果、甲状腺等価線量の100 ミリシーベルトに基づいたスクリーニングレベル(0.2 μSv/h)を超えた子供は居なかったと言及されている。

2011年11月13日に開催された、国連総会第67セッション第4委員会の議事録より抜粋する。
http://www.un.org/News/Press/docs/2012/gaspd523.doc.htm
「この調査においての最高値は『35 ミリシーベルト』であり、チェルノブイリ事故の時よりもはるかに低いために、安心できる報告として国連総会で伝えられ、UNSCEARアルゼンチン代表は、『その良いニュースは強調されるべきだ。』と力説した」

この甲状腺被ばく調査は、いわき市で2011年3月26−27日に、川俣町で2011年3月28−30日に、そして飯舘村では2011年3月29−30日に 行なわれた。飯舘村では、バックグラウンド放射能レベルがところによっては10 μSv/h 以上あったりと、大変高かったため、必死でバックグラウンド値が低い場所を探さなければいけなかった。やっと、市役所の会議室一画でバックグラウンド値が 0.2 μSv/hである場所を見つけ、そこで300人の子供の甲状腺被ばく量検査が行なわれた。飯舘村の子供達を含んだグループ全体として、55%が 0 μSv/h 、26% が 0.01 μSv/hであり、全体として 99%が0.04 μSv/hだった。一番高い数値は 0.1 μSv/hだった。だが、バックグラウンド値がそんなに高い場所で、正確な測定ができると証明できるのだろうか?

それにも関わらず、一番最新の県民健康管理調査の甲状腺エコー検査の結果によると、95,954人の子供の38,327人 (39.9%) に異常が見つかっている。福島県には約36万人の子供達が居住しており、甲状腺エコー検査の先行検査はまだ終わっていない。
www.fmu.ac.jp/radiationhealth/results/media/9-2_Thyroid.pdf

コンカはフォーブス誌の記事で、「UNSCEARは去年の福島での原発事故による観察可能な健康影響を見つけなかった。全く影響がなかった。」と書いているが、真実はかけ離れているかもしれない。

失礼かもしれないが、コンカが言及しており、彼の主な情報源であると思われるWorld Nuclear Newsの記事内でも言及されているWHOや東京大学の研究調査の情報は、正確でないかもしれない。実際にコンカがどの研究調査に言及しているのかは、知 る術がない。もしもWHOの「2011年東日本大震災後の核事故による予備的線量推定」であるなら、その情報源は主に日本政府の公式発表であると思われ る。
http://www.who.int/ionizing_radiation/pub_meet/fukushima_dose_assessment/en/index.html

日本政府は確かに20キロ圏内に避難命令を出したが、実際の避難状況は混乱を極め、政府がSPEEDIシステムの予測情報を公表しなかったために、場合に よっては放射能プルームの方向へ避難した人もいた。また、避難したと言っても、単に福島県内の別の市町村へ移動した場合、そこで放射能プルームに会う、と いう場面もあった。「福島県を速やかに避難させた」と言うと聞こえはいいが、実際にはそんな綺麗事ではなかったと言う事だ。安定ヨウ素剤は、町長の勇気あ る行動の結果、福島県の反対を押し切って独自の判断で町民に投与させた三春町以外の市町村では、統一して投与されていない。こういった詳細は、公的文書に 含まれていない場合があり、海外から情報を探す場合には入手しにくい。

実の所、多大な放射能汚染を受けたのは、福島県だけではない。放射能プルームは最初は北東へ向かったが、南に方向を変え、東京や関東地方を含む広範囲を汚染した。

この画像は、福島第一原発から5キロ西に位置するモニタリングポストで新たに見つかったデータを使って構成された、最近報道されたヨウ素131の拡散シミュレーションである。


東京大学の研究調査に関して、コンカはこの「福島原子力事故後の内部被ばく」に言及している可能性がある。この研究では、被ばく量が少ない、と報告された。
http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1346169

しかし、この研究の結果には、いくつかの理由で疑問が生じる。まず最初に、内部被ばくは、ガンマ線しか測れないホール・ボディー・カウンターを用いて測定さ れた。放射性セシウムというのは、ベータ崩壊によって放射性バリウムになり、この放射性バリウムがガンマ崩壊をするのだが、その際のガンマ線がセシウムの ガンマ線として測定されている。結果として、ホール・ボディー・カウンターの検査結果は、ガンマ線の測定しか含んでいないために、原子炉から放出されたで あろう様々な放射性核種による内部被ばくを真に表しているとは言えない。また、この研究での検出下限値は、かなり高い設定で210から250ベクレルで あった。

コンカが、分量が少量であってもまだまだ汚染されている食品の消費や、「少ししか汚染を受けてない地域」への帰還を促しているのは興味深い。まさに全く同じ 事が、日本政府により、「復興」事業として促進されているからである。実際、日本での経済新聞大手である日本経済新聞は、コンカによるフォーブス記事の完 全和訳を、2013年1月17日にオンライン版で掲載した。
http://www.nikkei.com/article/DGXZZO50651160W3A110C1000000/

誠に、フォーブス誌と日経新聞がどちらも「経済」誌であると言うのは興味深いところである。「経済」に関心を持つ人達は、「平和な」原子力使用を推進するた めに、放射能や放射能汚染による健康被害を積極的に極小化しがちである。即ちそれは、結果として、汚染されていない空気を吸い汚染されていない食べ物を食 べると言う、人間が持つ基本的人権を無視することである。

コンカは、自分の専門分野である核廃棄物処理の事になると、興奮気味のようである。少なくとも、コンカは、除染と呼ばれている、表土や落ち葉を移動させるだ けの行動が全くお金の無駄であると正しく指摘している。しかしながら、コンカは、放射能で汚染されているかもしれない震災瓦礫が、多大な費用を費やして全 国に搬送されて焼却されているのを知っているのだろうか?記事を書く際に、情報の確かさを証明できるような下調べをしていると思えないので、おそらく知ら ないだろうと思われる。

食品の放射能基準値が下げられた事は、日本人が「理由のない制裁」を受けていることになるのだろうか?100 ミリシーベルト以下の線量にLNT仮説を適応し続ける事は、本当に犯罪的なのだろうか?

もちろん、コンカには、例えどんなに情報を混乱させておくための意図的にあいまいな屁理屈、即ち、コンカ自身がフォーブス記事内で用いた言葉であ る”prevaricating”に表現されるような言動であっても、自分の意見を主張する権利はある。(コンカ自身、フォーブス記事内で、 “prevaricating”という言葉をUNSCEARに向けて発しており、「言葉を濁すようなことをやめろと言い続けて来た」と述べている。)しか し、「100 ミリシーベルトは大した事がない」と大言壮語するのを見ると、「ミスター100ミリシーベルト」として有名な福島医科大学の山下俊一氏には新しい友人がで きたかもしれないと思わずにいられない。そして、本当に犯罪的なのは、「許容された世界的基準値」が何であったとしても、日本人に、どんなに少量の放射性 物質であっても、放射能汚染された食品の摂取を強要することである。

福島第一原子力発電所の避難区域に置き去りにされた 牛における人工放射性核種の分布

東北大加齢医学研究所の福本学教授らのチームによる、福島原発の20キロ圏内で置き去りにされた牛の内部被ばく研究の要点和訳です。
英語論文リンク
http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0054312

関連ニュース記事 保存用
http://www.twitlonger.com/show/kq4frr


福 島原発事故後、2011年4月22日付けで20キロ圏内には3400頭の牛、31,500匹の豚と63万羽の鶏が残された。5月12日には政府から福島県 に避難区域の家畜の安楽死の指示が出た。福島原発事故を受けての放射性セシウムによる慢性被ばくのリスク評価の重要さが研究者によって指摘されていたが、 動物モデルの慢性的バイオアッセイが存在しない事も強調されていた。避難区域に残された家畜のほとんどは個別の識別番号によって見分ける事ができるため、 放射性核種への慢性被ばくの評価のための動物モデルとして理想的だろうと考えた。放射性核種の生物動力学と内部被ばくの線量評価の基本的な情報を得るため に、牛の複数の臓器におけるガンマ線放出体の人工放射性核種を測定し、臓器特異性と代謝を調べた。

2011年8月29日から11月15日の間に、合計79頭の牛を捕獲した。そのうち27頭は南相馬市で、52頭は川内村で捕獲した。63頭はメスの牛(3頭は妊娠中)、10頭はオスの子牛で3頭はメスの子牛だった。

ガンマ線スペクトル分析では、セシウム134と137、銀110m、テルル129mの光電ピークが見られた。(図S1)コントロールとして使われた北海道の牛からは、どのピークも見られなかった。

図S1 牛の臓器内で検出された体内放射性核種のγ線スペクトル分析 pic.twitter.com/cOLIXGPg




表 1は各臓器のカウント数から計算された、この4つの放射性核種の濃度である。測定値は全て、大放出が起こった2011年3月15日に減衰補正された。ここ ではセシウム134とセシウム137を合わせてセシウム137と言及する。セシウム137は筋肉組織での濃度が一番高かった。胸最長筋、大腿2頭筋と咬筋 でのセシウム137濃度には統計学的差がなかったので、この3つをまとめて「骨格筋」と分類した。

表1 牛の臓器と末梢血液内のセシウム134、セシウム137、銀110m、テルル129mの濃度
pic.twitter.com/GZmRV2Ba


回帰分析によると、末梢血液と臓器のセシウム137濃度の間には線形相関が見られた(図1)ので、臓器内の放射性セシウム濃度は血中濃度から推定できる事が示された。

図1 区画毎の血中セシウム137濃度と臓器内セシウム137濃度の関係 pic.twitter.com/F8UW7S99



牛 は捕獲された区画によって3つのグループに分けられた。区画1と3は福島原発から北に位置する南相馬市で、区画2は南西に位置する川内村だった。区画1の 牛は原発事故後に畜舎の中に置かれ、放射性核種汚染がない牧草と放射性汚染がある雨水を与えられた。区画2と3の牛は、放牧され、事故後に汚染された草を 自由に食べた。

表S2は、区画ごとの、牛の臓器内におかるセシウム134とセシウム137濃度を示した。区画1と3は同じ市内であったが、餌の条件が異なった。
 
表S2 牛の臓器内におけるセシウム134とセシウム137の濃度 pic.twitter.com/V03xQiTZ



区画2と3での土壌のセシウム137濃度はほぼ同じであった(表S3)。血中のセシウム137濃度は、区画3が最大で、区画1(汚染牧草を食べなかった)が最小であった。これは、体内に蓄積した放射性核種の濃度は、主に餌の状態と牧場の地理的状況に影響される事を示す。

表S3 土壌と牧草の放射能濃度 pic.twitter.com/jX7HB8cf




母体から胎児への放射性核種の移行は内部被ばくに関しての最大の懸念のひとつである。

捕獲された3頭の妊娠中の牛の、胎児と母牛の放射性セシウム濃度の比較は図2Aに示され、胎児の方が母牛の1.19倍であった。

図2A 胎児と母牛のセシウム137濃度の比較 pic.twitter.com/BtUNIEzo



セ シウムは胎児と母牛の間を自由に移行し、胎児の全ての組織に均等に分布するとみなされている。すなわち、放射性セシウム濃度は、母牛よりも胎児の方で高 かった。銀とテルルは経胎盤性を持つが、銀110mもテルル129mも胎児の臓器には見られなかったので、どちらも母体の臓器に蓄積され、胎児には移らな かった事を示す。

区画2で3組の母牛と子牛を捕獲し、子牛が原発事故後に生まれ、捕獲当時に断乳中であったのを確認した。

図2Bによると、子牛における放射性セシウム濃度は母牛の1.51倍であった。

図2B 子牛と母牛のセシウム137濃度の比較 pic.twitter.com/RQjZf5fq



子 牛の臓器におけるセシウム137の蓄積は、母牛の該当臓器との相関関係にあるが、母牛よりも濃度が高いという結論に達した。新生児と成人における水と電解 物質の代謝はかなり異なるはずであり、餌のカリウム配合量が放射性セシウム濃度に影響を与えるかもしれない。この子牛達が摂取していた母乳と牧草の割合に ついてのデータはない。

こ のデータでは、甲状腺のセシウム137蓄積濃度は他の内臓よりも低かった。バンダジェフスキーは、放射性セシウムの蓄積は内分泌器官、特に甲状腺に最大に 見られたと報告している。人間と牛の種族間の違いを考慮しなくてはいけないが、放射性セシウムは甲状腺癌発生にあまり影響がないと思われる。

ウクライナの汚染区域の居住者では、膀胱の尿路上皮の慢性炎症と増殖的な異型細胞の発達が報告されている。この研究では、膀胱におけるセシウム137濃度が比較的高かった。肉眼で観察する限り、膀胱に異常は見られなかった。

銀110mは核分裂生成物でないが、安定同位体の銀109の中性子捕獲によって生成される。銀110mは、胎児以外の牛の肝臓で検出された。銀110mとセシウム137の比率は、土壌で0.5%以下、草で5%以下であった(表S3:既出)。

チェ ルノブイリ事故後の羊の肝臓での銀110m蓄積量と肝臓への移行係数は、セシウム137よりも大きかった。なので、銀110mの肝臓への移行係数は、セシ ウム137よりも高いことが示される。銀110mの血中濃度と肝臓での濃度に相関関係は見られなかった(論文内6ページ目の図3B)。ラットとネズミにお いては、銀は主にリソソームに関連した組織(リンパ節、肝臓、腎臓や中枢神経)に蓄積する。また銀は肝臓のクッパー細胞に集中して蓄積する。よって、肝臓 は、銀110m蓄積の主要なターゲット臓器であると結論づけられる。

測定が原発事故の7ヶ月後だったにも関わらず、牛の腎臓内でテルル129mが明らかに検出された。テルル129mの半減期は33.6日と比較的短いので、腎臓は、テルル129m蓄積のターゲット臓器であると結論づけられる。

原 発事故後、大量のテルル132が大気に放出された。最初はテルル129mよりも多くのテルル132が避難区域の土壌で見つかった。テルル129mが腎臓に 蓄積されると言う事は、福島原発事故直後に、テルル132もまた腎臓に蓄積した事を示唆する。テルル132の半減期は3.2日で甲状腺に向性を持つ放射性 ヨウ素132(半減期2.3時間)に崩壊する。別の研究では、牛に経口投与された放射性テルルが、どの組織よりも甲状腺に多く蓄積したと報告されている。 これらの結果は、ヨウ素131と同じくテルル132も甲状腺への健康被害リスクの評価で考慮されるべきだと言う事を示唆する。

現 在、様々な種族を代表する組織バンクを作るために、避難区域内での牛を含む動物の組織をさらに収集している。まず最初に、動物に蓄積された放射性核種の線 量評価をするつもりである。電離性放射線の影響に直接関連づけられるであろう病巣を探すために、解剖された動物の顕微鏡検査も行われている。この研究は、 福島原発事故後の牛における様々なγ線放出核種の臓器特異的蓄積についての最初の報告であり、公共衛生と放射線安全の改善に貢献するはずである。

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2013年2月4日月曜日

福島救出作戦の永続的な遺産:パート1 米国海軍軍人の放射能汚染




A Lasting Legacy of the Fukushima Rescue Mission:
Part 1 Radioactive Contamination of American Sailors
by Roger Witherspoon


原子力空母ロナルド・レーガン


ロジャー・ウィザースプーン氏の2013年1月31日の記事、”A Lasting Legacy of the Fukushima Rescue Mission: Part 1 Radioactive Contamination of American Sailors ,“「福島救出作戦の永続的な遺産:パート1 米国海軍軍人の放射能汚染」を完全和訳しました。

元の英文記事
http://spoonsenergymatters.wordpress.com/2013/01/31/a-lasting-legacy-of-the-fukushima-rescue-mission-part-1-radioactive-contamination-of-american-sailors/

                  *****

米国防省は、日本において、破壊した福島第一原発から放出された放射性雲に捕えられた7万人弱の米軍人、軍属とその家族達の、前例のない医療登録を放棄する事にした。

登録の更新を止めるという事は、日本の63カ所の基地に駐屯している海兵隊、陸軍、空軍、工兵隊と海軍の軍人達、およびその家族に起こるであろう健康問題の 推移を観る手だてがなくなる、ということである。さらに、原子力空母ロナルド・レーガン第七艦隊の何千人もの水兵達や海兵達に放射能被ばくによる問題が出 ているのかを決定する際、彼らを見捨てる事になる。

第七艦隊は、南太平洋での任務から福島へ、トモダチ作戦のために派遣された。トモダチ作戦は、日本の東北沿岸部を破壊して2万人以上の死者を出した地震と大 津波に対する、80日間の人道支援と救出作戦だった。この救出作戦は、日本政府に要請され、米国務省、原子力規制委員会、国防省とエネルギー省によって コーディネイトされた。5500人の乗組員を持つ原子力空母ロナルド・レーガン以外に、打撃群は、ミサイル駆逐艦4隻(プレブル、マクキャンベル、カー ティス・ウィルバーとマケイン)と巡洋艦チャンセラーズビル、そしてその他の応援艦で構成された。

これまでに、救出作戦に参加した150人以上の男女の軍人に、放射能被ばくによって引き起こされたと思われる、腫瘍、振戦、内出血や脱毛などの様々な健康被 害が起こっている。彼らはこの状況について海軍を責めていないが、東電が福島原発から出ている放射能汚染の拡散状況について米国政府に嘘の情報を提供した と言う理由で、東電に対する訴訟に加わりつつある。そして、国防省がトモダチ登録を放棄すると言う事は、彼らが医療的な援助を受けられないという事にな る。

航空母艦レーガンの航海科士官の2人である、海軍クォーターマスターのモウリス・イニスとジェイミー・プリムは、海上での仕事は区分されているのだと説明し た。艦内で、危険な放射能プルームが風で飛ばされて来ていると知っている人は少なく、海流が汚染させているかもしれないとは、誰も知らなかった。警報機が 鳴った時、問題が起こったのだと分かった。

「我々は、艦内の塩分除去装置を用いて飲料水を作ります。」と、フロリダ州セント・オーガスティン市出身の28歳であるプリムは言った。「その水は海から来ま す。そして、海が放射能汚染されていました。そのため、艦内の水を一旦全部捨て、汚染がなくなるまで、装置を何度も洗って汚染が残っていないのを検査する 必要がありました。

艦内には冷却水を必要とする原子力発電所がありますが、その原子炉を、福島原発の原子炉からの放射能で汚染するわけにはいきませんでした。」


       原子力空母ロナルド・レーガンの位置を海図に記入する航海科士官ジェイミー・プリム

しかし、放射能汚染を避けるのは簡単ではなかった。海流が汚染されていない沖まで移動し、船やパイプを洗い、再び岸へ戻った。

「我々は、海図上のどの場所に放射能があるのかを目視することができたわけですが、そこを航海するのは緊張しました。」とイニスは語った。「一般の人々、およ び、民間の船は、放射能がどこにあるのか、あるいは、それが何か分からず、口コミや噂に頼っていました。我々はもっと多くの情報を持っていました。しか し、東 電から心配しなくていい、と言われていたがために、どれくらいの放射能が放出したのか、知る手だては完全に閉ざされていました。


航海科士官モウリス・イニス

我々は延べ80日、沿岸から2マイル(3.2km)まで近づき、そして、移動しました。風向きに左右されるイタチごっこでした。助けが必要な日本の人達を援助 するために戻り続けましたが、その度、また別の危険な場所に到達しました。最初に警報が鳴った後は、東電がないと言った場所に放射能汚染があり、その度に 全てを遮蔽し、ガスマスクを持ち歩かなければいけませんでした。」

放射能に関して的確な情報を得る事に関しては、陸に居た米国人達も途方に暮れていた。当時の米国原子力規制委員会(NRC)委員長であったグレゴリー・ヤッ コは、爆発した原子炉から50マイル(80km)以内に居住する米国人の避難を促した。国防省は、放射能探知機が環境放射能の上昇を察知した後、福島から 南へ300マイル(480km)にある横須賀海軍基地から、女性と子供を避難させた。

情報収集は困難であり、日本の官僚制の融通のきかなさがために、その困難は、さらなる困難さを招いた。『憂慮する科学者同盟』の原子力専門家の2人であるデ イヴィッド・ロックボウム(NRCと原子力産業の元コンサルタント)とエド・ライマン(核物理学者)は、データベースが一時間毎に変わって具体的な情報を 得るのが難しかった混乱期の間の、何千もの政府メールや外電などの調査をした。

「福島第一原発4号機の爆発後、日本側は使用済み燃料プールの冷却に十分な水を投入する事ができませんでした。」とロックボウムは言った。「なので、米政府は わざわざオーストラリアから、コンクリートポンプトラックを本州北部の米海軍基地へ空輸しました。なのに日本政府は日本の道路を移動する許可証がないと 言って、基地から動かす事を許しませんでした。彼らに起こっていた問題の規模を考慮すると、その優先順位は間違っていると思えました。

しかし日本文化は、皆が指揮者の指示に従うシンフォニーのようなものです。一方、アメリカ社会は、皆が一緒に演奏していても即興が高く評価される、ジャズ・アンサンブルのようなものなのです。」

日本側から、まとまった、かつ、信用に値する情報を得られない状況は、アメリカの救助活動の妨げとなった。

福島から約300km(注:原文では60マイル、すなわち96kmと書かれているが、実際には300km位)に位置する厚木基地がベースの、ヘリコプター戦 隊の上級一等整備士マイケル・シーボーンの回想によると、「地震と津波の後に、我々の戦隊は、一日の猶予を持って、司令部の荷造りをし、仙台と福島地域に 援助活動をするために三沢空軍基地に移動するように言われました。他の戦隊は全部グアムに避難していました。厚木基地が閉鎖されてしまい、もう戻れないで あろうと言う、大きな可能性がありました。もう戻れないだろうから、と自分の車のダッシュボードに名前と電話番号を記すように言われました。

三沢基地には3週間半居て、人を救助したり物資を運んだり、毎日継続した往復飛行の任務をこなしました。原子力技術者が何人か居て、任務から戻って来る人達 のスクリーニングをしました。軍服の一部分を切ってしまわなければいけないことが多くありました。(注:恐らく軍服の一部分が放射能汚染されていたためと 思われる)」

シーボーンは、グアムに3日派遣され、集中トレーニングを受けて放射能士官に任命された。それは簡単ではなかった。


 
放射能士官マイケル・シーボーン

「これは完全に未曾有の出来事でした。我々は、以前に放射能と対処した事はありませんでした。全てが新しい事で、皆、訳が分かっていませんでした。我々は、化 学兵器と生物兵器を用いた演習は十分受けていましたが、放射能を扱った演習は受けた事がありませんでした。これは核の事ですが、我々は核に関しては扱わな かったのです。空軍の連中は、放射能と対処した事がありませんでした。航空機が放射能汚染を受けた事はありませんでした。だから、我々は、全く盲目的に飛 んでいたのです。」

シーボーンのグループの整備士達にはルールがあった。帰還したヘリコプターに放射能スクリーニングをした。そして、汚染された部品を外して水を張った特別の容 器に入れ、滑走路の離れた場所に隔離した。三沢で雪が降り始めたので、福島に近い厚木基地に戻った。シーボーンは、電動放射能探知機で、変動する放射能レ ベルを、Corrected Counts Per Minute(CCPM)と言う単位で測った。(注:CCPMとは、CPMで測定された実測値からバックグラウンド値を差し引いた数値である)

「普通の外での自然放射線量は5から10 CCPMです。」とシーボーンは言った。「そして、それは太陽から来る放射線です。厚木基地でのバックグラウンド放射線量は、大気で200から300 CCPMありました。放射能はそこら中にありました。水が放射能で汚染されていました。地面が放射能で汚染されていました。空気が放射能で汚染されていま した。

ルールはこうでした。何かから500 CCPM以上の測定値が出たら、特別の手袋が必要でした。1000 CCPM以上なら、タイベックス放射能スーツが必要でした。5000 CCPM以上なら、スーツ、フィルター付き保護マスク、ゴーグルと二重手袋の一式が必要でした。汚染されたラジエーターはヘリコプターに戻すことはできな く、取り替えなければいけませんでした。ラジエーターを外して測定した時に、60,000 CCPMだった事があるのを覚えています。」

しかし、最終的に、安全設備は十分でなかったかもしれない。

作成に2年かかり、2012年末に完成したトモダチ医療登録は、米国上院退役軍人問題委員会の委員長であるバーモント州のバーニー・サンダース上院議員の主張に基づいて始まった、国防省、エネルギー省と 退役軍人委員会の共同活動であった。

トモダチ医療登録は、福島第一原発の1号機から4号機より何ヶ月も大気と海に放出された放射能、特にヨウ素とセシウム、への被ばくによる長期的影響があるかと言う事を決めるための医学的ベースラインを作るために不可欠な、徹底した登録制度であった。
https://registry.csd.disa.mil/registryWeb/Registry/OperationTomodachi/DisplayAbout.do

トモダチ医療登録の深さは他に例を見なかった。国防省の、252ページに渡る、7万人の米国人の放射能被ばく量評価は、福島からの距離、仕事の種類と呼吸数 への影響、天候の変動、性別、体のサイズや年齢等の色んな因子によって分類されている。子供は、年齢による放射能への感受性を反映して、6つの年齢グルー プに分類された。

さらに、この報告では「8000人以上が内部被ばく検査を受け、その結果が計算された被ばく量と比較された。」と述べられている。

しかし最終的に国防省は、全身と甲状腺においての最大で可能な推定被ばく量が、さらなる調査を必要とするほどひどくなかったと言う結論に達した。

海軍のスポークスマンであるマシュー・アレン大尉の声明書には次のように述べられている。「国防省は、この推定被ばく量の正確さについて非常に高い信頼を 持っています。なぜかと申しますと、この推定被ばく量は、大変保守的な被ばく状況(例えば、環境放射線量が高く、呼吸数が普通よりも多い60日間ずっと、 24時間外に居たと仮定)を仮定した結果であるからです。

この推定被ばく量は、退役軍人の線量再構成に関する勧告委員会(VBDR)と米国放射線防護・測定審議会(NCRP)によって綿密に検討され、推定被ばく量 の計算方法が適切であり、結果が正確であるという評価を受けました。さらに、線量推定は、日本政府やWHOの推定と一致していました。」

国防省のスポークスウーマンであるシンシア・スミスは、国防省が重篤な放射能汚染がなかったと決定したため、「2011年3月11日位から始まった福島第一 原発の事故とそれに続く放射能の放出後に日本の本州とその近辺にいた国防省関連の集団の中の誰においても、健康調査対策は必要でありません。」と付け加え た。

しかし、環境を汚染した放射能レベルが低かったから、日本で生活していた大人や子供の継続したモニタリングが必要でないという、国防省の総括的な結論に懐疑的な意見もある。


 
議会で証言するデイヴィッド・ロックボウム

ロックボウムは、「放射能は均一的に拡散しません。」 と言う。「ホットスポットとロースポットがあり、誰が高いゾーンに居て誰が低いゾーンに居るのかは、誰にも分かりません。実際の個人の放射能被ばく量が、 誰に分かると言うのでしょうか?飲食からの被ばく量は(推定の)計算に入れられませんでした。 

これは海軍が行った、数少ないデータポイントをグループ全体に照らし合わせるという、全力の試みです。多数の測定が行なわれましたが、これらは時間の中のひとつのポ イントに過ぎません。夜景をストロボライトで撮影するのに似ています。ストロボがつく度に、場所の一部分の写真を撮る事になります。でもそれで、暗闇の全 てをとらえたと言えますか?」

2013年1月30日水曜日

歯科医師からの報告 金属アレルギーと皮膚疾患について

みんなのカルテ様

4〜5年前より金属アレルギーの治療(原因除去療法)に取り組んでおります。
元々、私の所では患者さんが多くなく、その中でも金属アレルギーの患者さんは年に数名と少ないのですが、昨年の3.11以前は金属アレルギーを発症しても本人が金属アレルギーと知らず、また皮膚科の医師も金属アレルギーに詳しくないためアトピーもしくは原因不明の皮膚炎との診断で金属アレルギーと診断されず、漫然と内服薬やステロイド軟膏等で治療を続け、一向に改善のみられないまま悪化、経過し、後日患者本人が疑い皮膚科を転院したりネットで調べて来院し、私の指摘で金属アレルギーに詳しい皮膚科に紹介し金属アレルギーと判明する方ばかりでした。
一昨年の3.11以降の夏過ぎから、舌痛、口角が難治性に切れたりただれ・アトピー様の発疹、顔や首、腹部の多発性発疹、手指、足指のただれ・水疱などの皮膚症状を突然発症した患者さんが昨年末から新患として10人を越えました。当院から金属アレルギーに詳しい皮膚科を紹介し全員金属アレルギーの診断でした。

被爆の影響かどうかは何とも言えませんが、以前にはなかった症状の出方、発症の早さです。
金属アレルギーは口腔内の金属を除去することで治癒しますが、やはり免疫が低下していると思われます。

2013年1月27日日曜日

チェルノブイリの長い影 「妊娠女性ー胎児ー子供間の関係」のまとめ

衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/201110cherno.htm
(cache)
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/201110cherno.htm

チェルノブイリの長い影〜チェルノブイリ核事故の健康被害〜
(研究結果の要約:2006年最新版)
ウクライナ国立軍事医学研究協会 シニア・フェロー Dr. Olha V. Horishna著
http://www.shugiin.go.jp/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/cherno10.pdf/$File/cherno10.pdf
https://docs.google.com/file/d/0B3fFCVXEJlbvbjk1QWp1Vk55T2s/edit

                 ***

「チェルノブイリの長い影」の77ページからの「妊娠女性ー胎児ー子供間の関係」の部分の和訳がちょっと分かりにくいので、分かりやすくまとめてTWしたものをここにまとめました。

                 ***

低線量放射能が、妊娠女性とその胎児や子供、胎児の子宮内での発達過程、先天性出生異常の頻度および原因に及ぼす作用は、チェルノブイリ事故後の重要問題のひとつである。

ウクライナの小児科・産科・婦人科学会研究所(POG)の研究チームは、低線量放射能汚染区域に居住する妊娠女性を対象に、大規模な臨床スクリーニングを実施した。ブリストル大学との共同研究により、事故後の妊娠女性の胎盤の放射性核種濃度を明らかにした。

胎盤の放射性核種濃度を詳細に解析したことにより、胎盤の隔膜の変化、栄養障害過程の存在、ならびにアポトーシス(細胞壊死)の兆候がある細胞の数の増大を明らかにすることができた。これらの因子はいずれも、妊娠中の様々な周産期異常の発現をもたらす可能性がある。

妊娠女性の胎盤内と胎児の臓器内の放射性核種濃度:母体内のCs137が0.74ー1.27Bq/kg。胎盤内Cs137=3.48Bq/kg、α=0.9Bq/kg。胎児の肝臓、脾臓、胸腺にCs。歯にα核種。 pic.twitter.com/jn9JDwSX



ウクライナの比較的汚染の低い区域に居住する妊婦は、産科的病変・周産期的病変の発症リスクが高いグループとみなされ、流産、鉄欠乏性貧血、子宮出血、貧血、子宮内の胎児の低酸素症、妊娠中毒症などの合併症の可能性大。33.6%で子宮内の胎児の発育停止。

ベラルーシの研究(バンダジェフスキー)では、胎盤が胎児よりはるかに大量の放射性物質を濃縮したと判明。中枢神経系の異常は、先天性出生異常の最も大きな割合を占め、他の先天性出生時出生異常の場合よりも胎盤の放射性物質濃度が極めて多かった。

幼少期に甲状腺被ばくを受けた女性の方が、特に胎児が女児の場合に妊娠中の合併症を多く発症した。比較的汚染の少ない区域の居住者より、胎児の発育遅延頻度が高かった。男児は出生時に肥満の割合が多かった。妊娠中のカルシウム欠乏が増え、1/3が母乳不足だった。

女性の生殖器の放射能感受性は、幼少期と青年期の被ばくに対して極めて高い。高齢になってから生殖器系の病気を発症する頻度は、幼少期に受けた放射線負荷線量による。幼少時に被ばくした女性が生理的に妊娠する可能性はわずか25.8%だった。

高放射線量区域の居住者は、比較的汚染の少ない区域の居住者に比べて、新生児の出生時の体重が桁外れに高体重か低体重だったが、これは子宮内での発育中にホルモンのバランスが崩れていたからであった。出生時の体の発育速度が速いと、後の発育過程が減速する。

ウクライナの妊婦の胎盤と胎児の臓器(管状骨、歯胚など)には、アルファ粒子が含まれていた。高線量放射線管理区域での死産の子供の骨組織のアルファ放射性核種の含有量が最近になって増大しつつある事が特に問題である。

死産した胎児の骨の形態学的研究:特に椎骨、そして頻度は少ないが肋骨や管状骨の骨組織の血液供給に大きな変化。動脈血管壁の栄養障害的変化。骨芽細胞減少。骨基質と類骨組織の減少。骨芽細胞と破骨細胞の不均一分布が骨組織の異形成過程の特徴を示す。

骨芽細胞と破骨細胞の明らかな平衡異常が、形成・成長過程の骨の破壊的病変の発生機序を誘発する。故に、チェルノブイリ事故後に生まれた子供の骨組織の構造的・機能的変化が、子宮内の発育期から生じ始めていると仮定できる。pic.twitter.com/IjLufD4M


特に問題なのは、胎児の視床下部ー下垂体軸(視床下部、下垂体、甲状腺、副腎、および生殖腺)における構造的・機能的変化と形成異常である。子宮内での発育中にホルモンの相互作用が崩壊して制御されなくなり、胎児の身体的発達に変化が生じ、内分泌腺の疲労に繋がる。

幼少期や青年期に放射能被ばくした女性の子供の世代では、出生時の生理学的発育不全が多く、生後1年の間に病気にかかる事が多い。生後2年からは虫歯ができ始め、生後5年から甲状腺の過形成が現れる。高リスクグループの子供には、健康と考えられる子供が存在していない。

放射能汚染地域での様々な臓器の先天性出生異常の発症頻度は、比較的汚染の少ない地域の新生児の2倍であると思われる。(1994年のサトウら日本人による研究での発表は注目されなかったが、1998年にペトロヴァによって発表された論文などにより明らかになっている)

チェルノブイリの乳幼児における致命的な心欠陥や僧帽弁逸脱の発症頻度が高くなった。この頻度が高くなるということは、結合組織の形成異常または奇形の兆候であると考えられており、これはキエフのアモソフ国立心臓外科研究所の外科医によっても裏付けられた。

ハルキウ医療センターでの研究調査では、チェルノブイリの事故処理作業員から生まれた子供の、臓器異常を伴った発育障害(SADと呼ばれる小さな発育異常)の発症頻度が高くなっている事が明らかになっている。

SADの「マーカー」には、脊柱側彎、胸部奇形、歯の異常(状態・位置)、早期の複数に及ぶ虫歯、歯のエナメル質の形成不全、皮膚の異常(乾燥肌・肌荒れ)、発毛異常、薄毛または斑状育毛などが挙げられる。

化学療法を受けている子供以外のチェルノブイリの子供に見られる育毛不良については、豊富なデータや写真があり、起こり得るさらに重大な健康問題の指標となっているのに関わらず、西欧の放射線保健衛生機関と提携している機関の研究者らによる関心は低かった。

病気発症リスクが最も高いグループは、被ばくした両親から生まれ、7カ所以上のSAD異常のマーカーが見られる子供である。このような子供は心臓や腎臓等の生命維持に重要な臓器における最も危険な病変を検知するために、直ちに超音波スクリーニングを実施する必要がある。

ウクライナのほとんどの産科小児科病院では、効果的な妊婦検診や、高解像度の超音波スクリーニングが実施されていないため、毎年2000人を超える新生児が、未診断または治療不可能な心異常・胸部異常によって死亡し、心疾患を来たした新生児が数千人以上にも及んだ。

キエフのアモソフ心臓外科研究所によると、心欠陥をもつ新生児の明白な増大が、診断環境の改善のためか、集団において先天性心欠陥が実際に増大したためなのかは不明。少なくとも、このような異常には、極めて綿密な研究と、さらに徹底したスクリーニングの実施が必要。
ウクライナ新生児センターでは、多発性出生異常や珍しい異常の発症頻度が、チェルノブイリ事故前よりも有意に高くなっている。この異常には特に、多指症、臓器奇形、四肢の欠損または変形、発育不全、および間接拘縮症などが含まれる。

数千人の女性が放射能汚染区域に居住し続けていると言う事は、授乳する母親に長期間の内部被ばくが起こるため、授乳育児の再検討を必要とする。汚染区域に居住して母乳で育てられた子供は、粉ミルクで育てられた子供よりも、体内の放射性セシウム濃度がはるかに高い。

母乳からのセシウム移行のリスクは、チェルノブイリの主なフォールアウト地域からずっと離れた所に居住している乳幼児にも該当する。イタリアでの母乳のセシウム137濃度の研究によると、濃度は比較的低かったが、事故から10年以上経過してもなお上昇していた。

アイルランドの保健機関は、1998年にようやく日常の制限を解除した。フランスの機関は、1998年になってようやく、チェルノブイリによって蓄積した放射性セシウムのリスクが増大していることについて、ピレネーの羊飼いに注意を呼びかけた。

公衆衛生の観点からみると、この問題には、きわめて広範囲に及ぶ研究と、各代替手段のリスクおよび便益とのバランスを慎重に取る事が必要である。

科学的・臨床的研究で蓄積したデータは、生殖系と妊婦の健康状態に関して総合的に解析することが必要である。これは、「母親ー胎児ー子供」という、最も基本的なライフサイクルと密接に関わっている患者や、放射性物質の破壊的影響に特に損傷を受けやすい患者の防護・スクリーニング・治療およびリハビリテーションに対する適切な措置を開発するためである。

時宜を得たスクリーニングや、綿密で積極的なモニタリングによる十分な予防措置を行えば、医師は子供のさまざまな病変の発生率を大幅に抑える事ができる事を示唆している証拠があるため、データの解析はきわめて重要である。


(January 5, 2013  by Yuri Hiranuma)